2009年10月 4日 (日)

連絡事務局(都電網研究会)所感

この度、各政党の担当者様には、総選挙を控え多忙な時期に、短い回答期限にもかかわらず迅速に対応いただき、大変感謝する次第です。

さてアンケートの結果、3つの設問に具体的・直接的にに回答いただけたのは、残念ながら社会民主党のみでしたが、全体としては、これまでの潮流であった「マイカー中心のまちづくり」が行き詰まってきており、その代わりとなる、公共交通を活かした「歩行者中心のまちづくり」の重要性が認識されているということが明らかになりました。この総論では、各党とも違いはありませんでした。

個々の設問については、政党により捉え方に多少の幅があるように見受けられます。問1の次世代型路面電車(LRT)の大都市圏での導入というテーマについて大掴みには各党とも前向きなようです。特筆すべきは民主党の「交通基本法」制定の動きで、法案自体はかなり以前から公表されていましたが、これでやっと80年代フランスの状況(同様の法律を制定し、交通改革を進めた)に追いつくのでは、と期待がかかるところです。

問2のまちの中心部でのマイカー流入規制策では、意見が分かれました。明確な反対意見こそなかったものの、慎重意見が多く、特に道路課金制度(ロードプライシング)ついては前向きな回答をお示しいただいたのは社会民主党、日本共産党のみでした。一口に課金制度と言っても細かく見ていくと、海外都市により様々な概念のものがあるのですが、このあたり、実際は日本の道路交通のパラダイム転換が、現況ではまだかなり困難であることを示していると言えます。

問3では各党とも「トラム・トランジットモール」導入に前向きで、これは問2と規模の違いこそあれ、マイカー交通を制限するという似た命題を孕んでいるはずですが、一転して、賛同・理解を示す回答が多く寄せられました。ここからは、小規模な交通規制で「人間中心の空間」を取り戻し、モータリゼーション以前からの商店街を活性化するという概念が、広く浸透していることが読み取れます。

当連絡事務局の反省としては、東京圏の交通まちづくり団体として、人口数百万以上の大都市で焦点となりそうな個別課題についての設問をしたつもりだったのですが、その点で、所期の回答は多くは得られなかったところがあります。回答期間がわずか5日間では、総合的な回答が多くなるのはやむを得ず、もっと早い時期にアンケートを各政党にお送りし、選挙公示前の時間的余裕を多く持っていただくべきでした。

ともあれ、各政党に対しマイカー流入規制やトランジットモールなど大都市における路面電車(LRT)導入・活用に関する論点が示せたとすれば、今回のアンケートの意義は充分あったものと考えます。この結果も足場に、今後とも21世紀の「交通まちづくり」を広く世間に訴求していければと思います。

2009年8月20日 (木)

主要政党にアンケートをとりました

2009年8月16日

総選挙が迫ってまいりましたが、このたび「池袋の路面電車とまちづくりの会」と「都電網研究会」は共同で、日本の大都市における路面電車(路面公共交通)について、アンケート(全3問)を次の各党にとりましたので、結果を報告いたします。

自由民主党公明党民主党日本共産党社会民主党国民新党みんなの党

アンケートの送付は2009年8月11日、回答期限を8月15日としました。

とり急ぎ、アンケート質問と各党からの回答のみ下記にて到着順に掲載いたします。基本的に原文ママ、機種依存文字のみ替えました。(自由民主党、公明党、みんなの党は8月16日現在、未回答です)

ご回答くださった各党の皆さん、ご協力ありがとうございました。
連絡事務局:都電網研究会

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2009年8月20日

自由民主党本部より回答(8月19日付、20日着)をいただきました。
ご協力ありがとうございます。追加掲載いたします。
連絡事務局:都電網研究会

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2009年8月11日

(自由民主党 公明党 民主党 共産党 社会民主党 国民新党 みんなの党)御中

池袋の路面電車とまちづくりの会・都電網研究会 アンケート


 私たち、池袋の路面電車とまちづくりの会と都電網研究会では、池袋地区や都電荒川線をはじめ、都内で次世代型路面電車(LRT)を中心とした交通まちづくりの推進を、歩行者の視点、公共交通利用者の視点で研究し、提案活動をしています。

 私たちは、過度に自動車に依存した状況を改めて自動車の交通量を抑制し、かわりにいわゆる交通弱者や移動制約者などの方々にとって利用しやすい路面電車(LRT)などの路面公共交通を充実させることが、今後東京など大都市においても必要と考えております。

 しかし、公共交通とくに路面電車(LRT)の充実には、法制度などの国の政策の根幹に関わる多くの問題があります。国会議員の方々のご理解とご協力がなければ、このようなまちづくりを実現することは出来ません。そのため、皆様には下記のアンケートにぜひお答え頂き、ご意見を伺いたいと思います。よろしくお願いします。


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◎ 質問1
都市交通政策の中で、次世代型トラム(LRT)を日本の大都市圏においても積極的に導入していくような、政策や提案をお持ちでしょうか。

a ある  
b 直接は考えていないが、関係する提案はある
c ない 
d その他(具体的に:      )

上の質問でaやbを選んだ方へ
具体的に導入をすすめていくための、政策提案などがありましたらお教え下さい。


<日本共産党の回答>

 (a) ある
 日本共産党 政策・提言
 「規制緩和万能路線を改め、地方の鉄道、公営バス、コミュニティバス、LRT、離島航路、フェリーなど、生活に欠かせない地域公共交通を維持します。バリアフリー化がすすんでも移動困難な人のための輸送手段(個別的代替輸送・スペシャルトランスポートサービス)の確保をはかります。」(今度の総選挙政策の各分野別政策の24.【防災・安全のまちづくり、過疎対策をすすめます】の「地域の足をまもります」にあります。今後とも、この実現をめざします。)


<民主党の回答>

 (a) ある
 「交通基本法」を制定し、国民の「移動の権利」を保障し、新時代にふさわしい総合交通体系を確立します。その内容は、(1)国民の「移動の権利」を明記する(2)国の交通基本計画により総合的な交通インフラを効率的に整備し、重複による公共事業のムダづかいを減らす(3)環境負荷の少ない持続可能な社会を構築する(4)都道府県・市町村が策定する地域交通計画によって地域住民のニーズに合致した次世代型路面電車システム(LRT)やコミュニティバスなどの整備を推進するーー等です。


<社会民主党の回答>

 (a) ある
 従来から社民党は、排ガス抑制・省エネルギーの地域公共交通体系を確立するため、公害のない安全な大量輸送機関である路面電車の役割を見直し、その復活・活性化を図ることを訴えてきました。1996年に、路面電車に対する支援策の必要性を党として初めて打ち出しました。その後も、人と環境にやさしい生活交通体系として、超低床車両を使用した新しい路面電車であるLRT(軽快電車)を強力に支援する施策を打ち出しています。軌道の専用化、車両の改善(大型化、低床化、冷暖房完備、ワイドドア化)、新車両購入や軌道敷設・補修に対する財政支援を進めていきます。
また、LRT推進のための法整備も検討しているところです。


<国民新党の回答>

 (d) その他
 自動車交通の規制とCO2削減効果が期待されるトラムは、大都市圏でも地下鉄ほどの需要がない区間や郊外部の拠点を結ぶ外環状線の路線が適しているといわれますので、わが国においてもその導入を前向きに検討すべきと考えます。


<自由民主党の回答>

 (a) ある
 環境問題や少子高齢化等に対応した人と環境にやさしいまちを実現するためには、過度に自動車に依存しない、LRT等の公共交通を中心としたまちづくりへの転換が重要と考えております。
 これまで、LRTの整備促進のため、予算制度等創設したところです。
 今後、LRT整備のより一層の促進に向けて、制度の充実等積極的な取り組みを行って参りたいと考えております。


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◎ 質問2
まちづくりの一環として、都市における路面公共交通の役割を積極的に見直すために、街の中心部での自動車の流入や使用を制限する政策について、どのように考えますか

a 積極的に賛成(流入規制をしたり、流入自動車に対して
  課金してもよい) 
b 賛成
c 慎重に検討すべき 
d (街の中心部での)マイカーの使用制限には反対
e その他(具体的に:      )


<日本共産党の回答>

 (b) 賛成


<民主党の回答>

 (e) その他
 以下の三つの視点で総合交通ビジョンを策定し、その実現を目指します。(1)自動車中心のまちづくり政策を転換し、路線バスや軌道系交通(鉄道、路面電車、次世代型路面電車システム(LRT)等)を充実(2)道路を整備する費用をバス事業者等に補助し、サービスが向上するインセンティブを与えることにより移動困難者の利便性を確保(3)路線バスや軌道系交通機関などのマス・トランスポーテーションを見直し、環境負荷の低減につながるモード(交通機関)の整備ーーなどに努めます。


<社会民主党の回答>

 (a) 積極的に賛成(流入規制をしたり、流入自動車に対して課金してもよい)
 交通需要マネジメントを推進し、自動車の都心部乗り入れ規制や台数割当制度を導入するなど、中心市街地の自動車の総量規制に踏み出します。ロードプライシングを実施し、にぎわい楽しく歩ける街をつくるべきであり、脱クルマ社会を展望して努力しています。また、イギリスでは道路交通削減法という法律が制定され、目標を立てて道路交通量の削減を進めていることも踏まえた対策の強化を考えています。


<国民新党の回答>

 (C) 慎重に検討すべき


<自由民主党の回答>

 (C) 慎重に検討すべき
 ・市街地に流入する車両の課金等の規制については慎重に検討すべきと考えています。


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◎ 質問3
商店街などに面した道路において、一般の自動車を制限して歩行者と路面電車のみ通行できるようにする「トラム・トランジットモール」をつくる例が欧米の各都市に多く見られます。一方で日本においては、こういった道路をつくるための積極的な制度がありません。トラム・トランジットモールを今後各地に導入していくことを考えていますか。

a 積極的に導入したい 
b 慎重に導入したい 
c 反対(マイカー利用者も尊重すべき)
d その他(具体的に:      )


<日本共産党の回答>

 (a) 積極的に導入したい


<民主党の回答>

 (d) その他
 今回のご指摘をふまえ、今後検討していきたい。


<社会民主党の回答>

 (a) 積極的に導入したい
 歩行者専用のショッピングモールに公共交通を運行させた商業空間(トランジットモール)を広げ、街ににぎわいと魅力を取り戻し、「トランジットモデル都市」を目指しています。環境、福祉の面からも、マイカー依存を厳しく制限し、階段の登り降りもしなくて移動できる快適な都市交通が求められています。脱クルマ社会に向けた都市計画の中枢にLRTを位置付け、街作りを含めた広い視野で考えていきたいと思います。


<国民新党の回答>

 (d) その他
 質問1と同様、前向きに検討していくべきと考えます。


<自由民主党の回答>

 (a) 積極的に導入したい
 ・他の公共交通機関と含めて、トランジットモールを推進してまいりたいと考えております。


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